ゲーム感想『Lucifer Within Us』

2020-10-22

ゲーム感想『Lucifer Within Us』


悪魔が消え去りおよそ 100 年の時が流れ、人々が平穏に暮らす世界。
殺しとは無縁であった時代に突如として殺人事件が発生した。
事件を調査して背後に潜む悪魔を暴きだすため、退魔師シスター・エイダが動く。
というようなエクソシストな世界観の謎解きジャンルです。


プレイ後に気づいたのですが The Shrouded Isle と同じパブリッシャーだったようで、Digital Exorcist という単語に釣られて飛びついてしまったのでした。
Creative Director の Jongwoo Kim 、こういうテイストの作品作ってくれるのね、と認識。

直接的なネタバレは避けて書きますが、ゲームのストーリー的にわかりやすい部分や、攻略絡みの話、メタ考察から推測できる部分があるので、弱いネタバレ含みます。
買うかどうかの参考にしたいだけの方は、良いところ/悪いところ 以降は見ない方が良いです。



良いところ

事件の関係者それぞれのタイムラインを比べて、矛盾点から首謀者を暴いていく独自性。
退魔ジャンルとしての世界観・キャラクターがしっかりしている。
事件再現の演出とその変化が素敵で、文字だけではわかりづらい事件描写が良く理解できる。



悪いところ

没入感をそぐ作業的になってしまうような操作性の悪い部分がある。
Digital Exorcist と謳っているがその要素をゲーム内で感じる部分が薄い。
期待 (と価格) に反してストーリーが短い。






このゲームの容疑者タイムラインは、始めこそ手探り状態で新しく感じますが、"矛盾" の指摘や "告発" の失敗のペナルティがないことから、進むためのキーになる部分がわからなければ総当たりを試せばよいことが分かってしまいます。
常識的に考えると、一挙手一投足に疑いを持って問いただして雑に粗探しをしてくるような審問官は、無能とみなされ信頼を失ってしかるべきです。
推理ミスに対するペナルティが一切ないので、親切とはいえますが攻略に対する奥深さがなく、総当たり・あてずっぽうで解決できてしまいます。
話をよく読み推理するぞ!と意気込んだ目線で開始したので、少し拍子抜けしてしまいました。

証拠品の探索も1画面で完結している都合上、発見するというより作業に感じる部分があります。
証拠をそろえた後の "告発" の対象の容疑者を選ぶ際も、裏の裏を読むような込み入ったミステリー小説のようなものではなく、ある種のお約束的なシナリオ進行でもあり、また登場人物も少なめなので、ストーリーから驚き・奥深さを感じられません。
攻略目的であれば総当たりを許すゲームの易しさが気になり、ストーリー目的であれば (おそらく) ゲームシステムからくる制限が可能性を縮めた展開になっていることで落胆する。
どっちつかずな作品のように感じました。

ストーリーの最後にちょっとした世界観開示の語りがあるのですが、そこに結び付けるのは面白いものの、ゲーム内での表現なりシステムなりに落とし込まずに設定だけ明かされた感が強くて残念です。
そのうえで作品ボリュームもあと2,3章遊びたかったというボリュームだったので、内容は良いがボリューム短すぎと酷評する人の気持ちもわかります。




どこか影を帯びたキャラクターテイストであったり、この作中の世界は現代とリンクしているのか気になる世界観であったり、音を含めた丁寧な事件再現の回想演出がスムーズに進む様が見事であったり、一見の価値はあります。
海外産のゲームですが翻訳も見事でいい雰囲気を生み出しています。
それだけに、プレイヤーが用意された謎に挑むゲームとするか、感情移入して物語を楽しむゲームとするか、どちらかにもっと寄せた方がよかったのになぜそこで、しかもこのボリュームで止めてしまったんだと、開発者に問いただしたくなるのでした。



総じてアイディアはよかったがうまくゲーム内容として昇華できていない、惜しい出来に感じたゲームでしたが、推理ゲームの楽しみを覚えたので似たゲームで遊んでみたくなりました。

Interview: Jongwoo Kim - Lucifer Within Us (#GDoCExpo 2020)

Lucifer Within Us : 第一章『二人の兄弟』

0 comments :

コメントを投稿