ゲーム感想『ベオグラードメトロの子供たち』

2020-09-16

ゲーム感想『ベオグラードメトロの子供たち』


ベオグラードメトロの子供たち
"Children of Belgrade Metro"

東南ヨーロッパのセルビアの首都ベオグラード。
建設遅延の理由から行き場のない者たちの集う場となったベオグラード地下鉄を舞台とした、超常の能力に目覚めたものたちが織りなす物語。
主役のシズキがフィルム制作会社とやり取りする中で自らの過去を語っていく…という形で、舞台は幕を開けます。
登場キャラクターのピクセルアートの色彩と、陰りのあるグラデーションに惹かれてプレイし始めました。
ネデルカちゃん かわいい

以降、細部は伏せますがネタバレ気にする方注意です。



制作者は旅行経験のある日本の方のようですが、うまく異国の香りが再現されたテキストでした。
作中にはセルビア料理や舞台の描写がよく出てきて、読了後はドキュメントからその詳細を読むこともできます。
おなかが空いているときにプレイしない方がいいですね。

Acid Jazz, Garage 系の音楽もとても合っていて、静寂なパート・動きのあるパートともにかっこよく演出してくれます。
計算してか知らずかデフォルトのオートテキストのスピードで読み進めていると、曲の盛り上がりやブレイクがちょうどいい位置でやってきたりと、偶然かもしれませんが臨場感をもたせるのに一役買っていました。





もう一つの本作の魅力として、章が進んでいくにつれ主役シズキのある秘密が明らかにされていくのですが、これ以降のシーン描写にはたまらないものがあります。
うまい具合に可能性を残して描写されるので、もしかして…という if の推察が楽しく、退廃的で倒錯的なストーリーではありますが、その行方が気になり最後まで読み進めてしまうのでした。



すばらしいフレーバーの感じられる作品設定とヴィジュアルを擁しているのですが、 SF 的な考察とギミックが弱めです。
作中の超能力もサイコキネシス・パイロキネシスと王道路線のものなので、ファンタジーフィクションによく触れている人にとっては、所持能力の強みを十分に生かせていないように見えたり、殺傷力の高い力を軽んじて扱うキャラクターたちが浅はかに見えてしまったり、詳細を省いた進行でメタ要素を取り入れたテキストのように見えてしまったりと、舞台設定が残念に思えてしまう部分もあると思います。
そのことと戦闘パートの掛け合いが多めなのもあり、私としては超能力関連は好きになれませんでした。





惜しい部分もあるのですが、魅力的なヴィジュアルとクールな楽曲がキャラクターたちを良く彩っていて、どこか窮屈さを感じつつ生きる者たちが抗い足掻きながら生きる様がそこに見えるようで、十分に楽しめました。
この手のリアルとフィクションを織り交ぜた作品の放つ香りはたまらないものがありますね。


終盤あたりから薄々気づいてたのですが本作は成人指定だったようで、オフィシャルサイトでパッチが配布されています。 若干の物足りなさを感じながらプレイし終えたので、パッチ省かずにプレイした方が余すことなく味わえてよかったかもしれません。
制限あり ver. でも自虐的・性的・過激な表現を少し含むので注意ですが、そのデリケートな部分こそ本作の魅力のコアだと思います。
多少の異常描写が平気な方、紹介ページを見てピンときた方にはオススメです。

Children of Belgrade Metro
http://summertimeinblue.net/CBM/index.html

Steam
https://store.steampowered.com/app/1355500/

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