『アライアンス・アライブ』が良すぎた話 (ゲーム感想)

2021-11-02

『アライアンス・アライブ』が良すぎた話 (ゲーム感想)


自分の思い出のマイルストーンと呼べるような、そんな古めのゲームをプレイしなおしたい気分になるコトがたまにあります。
でも、思い出補正とか時代性込みで褒めちゃったりしてて、古いのばかりやり直しそう、懐古に捕らわれがちで良いことないなと、できるだけ思い出ゲームの再プレイは避けているのですが。

 

『The Alliance Alive HD Remasterd』

Steam スクロール中にたまたま見かけ、PC で出ていたのかと気づきます。
フリューのゲームはレジェンド・オブ・レガシー (3DS) を途中まで進めていたのですが、携帯機プレイ環境の好みで中断したっきり。
あの良い感触が PC の画面でできるなら…、とデモムービーをクリックして買うかどうか思案していたところに流れる浜渦サウンド。 呼び起こされるノスタルジーな感情に完全にやられてしまい、勢いでプレイし始めるのでした。
今回はそんなゲーム『アライアンス・アライブ (HD)』の話。



オールドスクール JRPG バトル

本作のバトルシステムを端的に言うと『ロマサガ伝統のあの戦闘』。
プロデューサー松浦正尭氏のオールドスクール JRPG 体験を重視する姿勢、『覚醒』という技習得のシステム、ゲームデザイン担当は小泉今日治氏、という部分からも推し量れる通り Romancing SaGa ~ SaGa Frontier 2 頃のバトル&ビルドの特色を受け継いだかのような精神的続編と言ってもよい出来の作品になっています。


 

それだけでも楽しくプレイできるのですが、プレイヤーのフラストレーションになる部分は本作では徹底的にケアされているのが特徴でしょう。
軽く思い浮かぶだけでも以下の通り。

  • 『覚醒』『防御・回避の割り込み技』のみならず、技のポジションレベルアップ、ギルドによる戦闘サポートと演出が優秀。
    プレイヤーが結果を予測しやすいターンベース戦闘において、インタラプト要素を多数はさんで飽きさせない工夫。
    (ディフェンス技の割り込み演出好きすぎてこれだけでたまらない)
  • 耐久度による武器ロストの喪失感は、切り札『ファイナルストライク』の高威力と、 "一時的な" 武器破損にとどめるトレードオフによって、惜しんで使えないという気持ちを過去のものにした。 (エリクサー症候群の方も安心!)
  • 覚醒での技習得・ポジションレベルアップをやりこむ際、必要な試行数が多いというランダム性には『資質』の要素でケア。
  • 敵の行動パターンが強力で運悪く負けてしまうランダム性への不満は『秩序の石』による戦闘リトライで回避。 (石使い切ることはなかったし、ボス前ほとんどセーブあるし、警告メッセージもある)
  • イベント戦闘以外は最大 HP の一時減少と引き換えに確実に撤退可能な手軽さ。
  • 昔からの JPRG スタイルを根底に据えた作りながら、高速化の機能でバトルでの稼ぎが作業的になる部分を現代的にケア。 (本作レベリングの必要性は抑えている方)
  • ゲームの中断 (クイックセーブ) も一部ダンジョン除きほぼ無制限の安心設計。
  • 突入後に敵が強すぎて後戻りできずセーブもした、詰んだ、とは無縁! (中断だけでのプレイはやや危ういので、オートセーブあればよかったかも)

戦闘がだるい、失敗のリカバリが難しいと言われがちだった部分には、何かしらのカバーが入って、プレイヤーを脱落させないようにしています。



世界観

セリフがよく練られていて、キャラクターの内情を加味したセリフが短い中に込められていて (とくに序中盤イベントでのアーシュラを気に掛ける関係者たち丁寧だった) 、ジーン&レイチェルコンビの見え隠れする信頼感、最後までベタだけどビビアン&イグナスペアの忠実な演出、イベント後にその立場によってセリフの変わるチョイ役の NPC たち。
パーティの先頭キャラで NPC 応対とセリフが変わるこだわり様。
どこを切り取っても、キャラクターが生きていると思えるテキストが散りばめられていて見事。


そしてすべての演出を統べる浜渦正志氏による楽曲。
SaGa Frontier 2 では華々しい楽曲を聞かせてくれて、 Unlimited SaGa では新しい道を探るかのようにデジタル色を少しずつだしていった浜渦氏。
シグマハーモニクスでの強く感情を揺さぶり緊張感のあるピアノ・弦楽器のメロディの波が押し寄せる作りをもって浜渦ゲームサウンドの完成と言って良いと思ってますが、本作でもその極地の音を聴かせてくれます。
メロディループによる強烈な印象付けも取捨選択されるようになってきた昨今、アライアンス・アライブでは、世界の情勢と登場人物たちの心情を激しく奏でるループサウンドを遠慮なくぶつけてきます。

もうひとつの音の要素の効果音、現代ではめずらしくキャラクターボイスなし。
そこが物足りないというのは間違っていませんが、ないからこそ、繰り返される印象的なメロディと効果音の絡みあいが、 RPG をプレイしている自身とゲームを強く結びつけてくれた、あの時代にプレイしたゲームの体験を呼び起こすのです。
カーソル操作・決定音から戦闘中の破裂音、覚醒発動のあの瞬間の演出まで、思考を遮ることはない音たちによって、記憶に強く刻まれる体験があります。


そうは言っても弱い部分も

弱点をあえて挙げるなら、3DS 初出の頭身低め・デフォルメ強めグラフィックが大画面ではやや寂しいところとか、携帯機由来のカメラワークがややアンバランスなところ、背景・エフェクトが省コスト気味で簡素と言えばたしかにそう。
フィールドを移動手段の切り替えで遊ばせるためか、アスレチックな作りに見えてしまう野暮ったさもあると思います。
ゲームの尺に関しては、この短時間エンターテイメントあふれる時代に数十時間を要する作品が許せるかどうか、プレイヤーによっては受け入れられないかもしれず。
(私はマッピング& NPC 会話ほぼ逃さないスタイルで夢中になれたので 50h かかった。 たぶん 20~30 が普通かも)
ビルド要素の全解禁がゲーム中盤のため、もう少し早くしてほしかった部分もある。

でもオリジナルが 3DS の移植作と考慮してあげてもいい部分もあるし、それら弱い部分が本作をダメにしているなんてことは全くありません。
開発側のインタビュー動画見ていても、リアリティなどよりも遊びを優先していることがうかがえ、意図した選択の結果、ゲームの作風をコントロールしていると褒める部分でしょう。
平尾リョウ氏の 2D イラスト完全再現と言っても過言ではない 3D グラフィックは素晴らしい出来ばえで、場面の空気感・緊迫感をうまく演出するエフェクト・効果音の違いなど細かい配慮もある。
操作性もロード時間も良し。
尺の長さも、世界観とストーリーに浸らせるための役を全うしている。
ストーリーの起伏もしっかりしていて、世界の謎が少しずつ明らかになる様相を楽しみながらプレイできる。

 

「長くてもいいから手堅い作りで、ストーリーに浸れる世界の JRPG やりたい」
「昔ロマサガ系プレイして楽しかった、記憶を消して再プレイできたらな」
という欲求があるなら、薦められない理由は何もない。

 

「これ、神ゲーだよ。」

こんなゲームをまた現代で味あわせてくれた、開発元フリュー、松浦正尭プロデューサーには感謝してもしきれません。
素敵なゲームをありがとう。

The Alliance Alive HD Remastered
https://store.steampowered.com/app/1027250/

ティギーちゃん


0 comments :

コメントを投稿